ひとつ めぐり/木立 悟
雨が光になるときに
置いてゆく穂は十の色
水銀の譜の散る窓に
まぼろしのかたちが来ては去る
爆ぜては透る
限りある音
色の速さを
あおぎ見る色
海を知らず 海へ向かう
滴がまたたき 片目を閉じる
雨がはおる雨の色
音の後に見ひらくもの
双つのかたちを水はめぐる
蒼の終わりの白へ白へ
熱はこぼれ 高まってゆく
空の逆さへ逆さへ響く
これしか色がありません
ええ 無量でいいのです
すべての生きものの入口に
ある日ふいに立つので
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