ひとつ めぐり/木立 悟
 
のです


    手のひらに沈む珠の行方
    まぶたの内をただ聴いている
    はじまりのかたち 肉のかたち
    おぼえていない光のかたち


   脱ぎ捨てた衣が標となり
   原をすぎる陽にたなびいている
   穂の滴を見つめる蝶
   無数の自身に動けない蝶


  那由他は那由他の那由他に分かれ
  硝子の巣から飛び立つ硝子
  影は直ぐの迷路を歩む
  霧と霧のはざまを歩む


 失くしたひとつに気付かぬまま
 ずっとお手玉をしていました
 空が空へ揺れています
 渡すものも無く 明けています


原のなかを
道は羽ばたく
白みはじめた地の底から
常に常にはじまりは吹く



















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