独奏/水川史生
 
 
希うものさえ内側から、肌を破ってしまうのだから 
銀色のペーパーナイフの腐食、あらば、他が為に 
ストレッタ、邂逅、流線型と星へ飛ぶ鳥 
言葉をいくつも連ねて 翅にする君の 
ピアノの音階にアインザッツ、ソナチネの昇華 
明くる日をと通り過ぎた世界へさよならが行く 
「何度も手を振っている。愛を信じながら」 
余白に埋めた涙を誰も知らない 
葬られたハロー、月へと届く前に消えたメッセージの行方 
白く上を向いた魚の腹へ注がれた恋情を 
書きつけて詩に変えてうたう君の描く 独奏 
ボルドーを貼り付けた眼で笑っている、 
涼やかなメロンソーダが上がってゆく 
(濡れた君
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