夏至の夜/佐々宝砂
 
朝いつもそうするように野原で花を摘み
花で飾った柱のまわりをみんながまわった
それから夜こっそりと泉にでかけて花束を投げた
水鏡には未来の恋人がうつるはず
妖精はお願いをきいてくれるはず
夏至の夜は特別だから

それはささやかなかわいい魔法だったけど
やっぱり魔法であることに変わりはなくて
わたしはわたしでなくなった
わたしの願いが叶ったから


バンシーの泣き声がひときわ大きくなる
気づけば部屋の北の隅に
白い服に赤く長い髪のバンシーがうつむいて
うつろな風のような声で
つるぎ と三度さけんで消えた
途端

たくさんのひとが階段を駆け上がる音
怒声 悲鳴
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(4)