夏至の夜/佐々宝砂
朝いつもそうするように野原で花を摘み
花で飾った柱のまわりをみんながまわった
それから夜こっそりと泉にでかけて花束を投げた
水鏡には未来の恋人がうつるはず
妖精はお願いをきいてくれるはず
夏至の夜は特別だから
それはささやかなかわいい魔法だったけど
やっぱり魔法であることに変わりはなくて
わたしはわたしでなくなった
わたしの願いが叶ったから
バンシーの泣き声がひときわ大きくなる
気づけば部屋の北の隅に
白い服に赤く長い髪のバンシーがうつむいて
うつろな風のような声で
つるぎ と三度さけんで消えた
途端
たくさんのひとが階段を駆け上がる音
怒声 悲鳴
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