滝と月/吉岡ペペロ
 
が見学しているあいだよくタバコを吸っているのを見かけた
通りがかりヨシミがあいさつをするといつも妙に礼儀ただしく返してきた
口からタバコをはずして両手を腰あたりにまっすぐおろして

あれじゃないか、

ハイビームで照らしても先が真っ暗闇だと分かった

あれだ、よし、突撃!

車は無理だな、

車をとめてふたりでアスファルトの山道をのぼった

滝の音しないな、

墨汁のなかを歩いているようだった
お互いの手と腕をからめていた
緑の冷えたしっけた匂いが触手のようにふたりをさわった

なんか出そうだね、

おまえ、そんな、怖いこと言うなよ、

カワバタが真
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