千桜/黒木みーあ
したちの居る部屋を通り過ぎ、別の方へと向かっていく。
千桜の方へ向き直すと、千桜がわたしの方を見ている。わたしも、そのまま千桜の顔を見つめてみるけれど逆光でよく見えない。一瞬、雑踏が途切れて、その後すぐに足音がまた階段を下りていった。
*
平日の、しかもお昼時だからか、近くの桜祭りの名所でさえあまり人が居ない。結局わたしたちは午後の授業を抜け出して、お菓子両手に花見にきている。
「 ね、うちの名前さ、千の桜で、ちはるじゃん。思うんだけどさ、花の名前付けられた子共って不幸になる確率高いよね。桜ですよ?しかも千ときた。そら勝てんわー。」
千桜は両手を上げ、桜を前に伸びをして
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