千桜/黒木みーあ
るわたしの包帯の端を止め直しながら、ワンテンポ間を開けて、千桜が笑った。
*
部屋の中、ちらばったままのほどいた包帯の白色が、千桜の首筋辺りから射し込んできた夕焼けの橙で、うっすらと染まる。時々、長い沈黙になることがあった。つまらないわけでも、雰囲気が悪いわけでもなく、ただ、ふたりで黙り込んでいるだけ。
千桜は立ち上がって窓を開けて夕空を見つめている。目の前の道路を、通り抜けていく雑音がちいさく反響を繰り返しては、どこかへと消えて行ってしまう。
突然、階段を上がってくる音がして、反射的に身構えた。千桜もドアの方を向いて、わたしと同じように身構えていた。足音は、わたした
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