千桜/黒木みーあ
 
桜は、やば、うちらちょっとミイラみたいじゃね、と言って、両腕の包帯を手で撫でていた。開け放った窓からは生ぬるい風が、趣味の悪い黄土色のカーテンを揺らして流れ込んでいた。その向こう側、校庭の桜の木も、同じように揺られ、無数の花びらが宙を舞っている。

ねえ、今週末花見しよっか。なんとなくそう思い口に出すと、千桜も窓の向こうに目を向けて、良いねぇ。と、お酒を飲む仕草をする。( その後ろから、他クラスの子が数人、わたしたちを二度見して通りすぎていく。

 「っていうか午後の授業、ゼッタイ教師につっこまれるよね。あえて聞こえないフリで押し通すとか、やっぱしダメかな。」
二の腕の方まで巻いてあるわ
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