誰も嗅いだ事のないいかがわしい臭い/ホロウ・シカエルボク
とした内臓の臭いに
小男はしわだらけの顔をしかめた
暑くなる前でよかった
暑くなる前でよかったと
清掃中の看板で閉鎖された路地裏で空を見上げる
建造物の間で見える一筋の空は
神が滑るための道のように思える
男の首には冷汗ともただの汗ともつかないものが
世界を確かめるみたいにゆっくりと滑り落ちる
あらゆる文脈がストップして
俺はキーボードに指先を預けたまま画面を眺めている
昨日よりはましな気温なので
待っていることは別に苦痛じゃない
男は妙にそうしたことに手慣れていた
牛か豚を捌くみたいにたんたんと作業を進めていった
きれい
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