誰も嗅いだ事のないいかがわしい臭い/ホロウ・シカエルボク
 
手っ取り早く気持ちよくなりたがる
濡れるために必要なものがスタンダードな妄想だって言うんなら
漏らしたものはヴィトンのバッグにでも塗りつけておくがいいさ


どんなに空が晴れても
光の当たることのないビルの物陰で
ひとりの清掃人が売春婦の死体を解体している
それは仕事だ
秘密裏に処理せよと雇い主から命ぜられた
年老いた痩せぎすの小男には判っていた
この女は死んだが俺はまだ生きなくちゃならない
血塗れのミンクからはち切れそうな財布を取り出して自分のポケットに入れた
どこかの暢気なオフィスの窓から
オール・ニード・イズ・ラブが流れていた
小男はミ
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