月のありかは/ねことら
り出し、ガレージまではしった。ぐちゃぐちゃに震える手でドアの鍵を開け見よう見まねでエンジンキーを回す。思い切りアクセルを踏みタイヤを軋ませ夜の国道をはしった。対向車のすごいクラクション。ヘッドライトの拡散。カーラジオからは爆音でキスだのラブだの甘ったるい声でポップソングが流れてて、止め方もわからなくて、頭はがんがん割れそうに痛んだ。きがつくとビルの立ち並ぶ知らない街にきていて、曲がり角のたび左折と右折をくりかえし、さいごは墜落するみたいに地下のモータープールに車を滑り込ませた。エンジンを切る。なんだか震えが止まらなくて、速い胸の鼓動を感じながら、ずっと両腕で体を抱えていた。それでも、いつのまにか眠
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