月のありかは/ねことら
 
か眠りにおちていった。


明けがたのモータープール。ラブホテルから従業員があくびしながら出ていくのが車の中からみえた。半地下だから陽がゆっくり差し込んできて、停められたたくさんの車のボンネットがいくつもひかりだしていた。遭難していた惑星の交信みたいに。わたし、はじめて運転しちゃった。かなしくておかしくて、あとからあとから涙が出てきた。声に出して、すこし笑って、蛇口が壊れてしまったみたいにずっと泣いていた。しずかな朝だった。お気に入りのセーターはアパートに忘れてきてしまったから、あたらしいものを買おう。きれいな色のものがいいな。ドアを開けると、冷たい空気がゆるりと溜まっていて、せかいはまだ眠たそうな顔をしている。車の鍵を抜いて、ちからいっぱいあかるいほうへ投げた。ちゃりん、と硬い音がした。


太陽が昇りきるまで、まだもうすこし時間はある。






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