月のありかは/ねことら
りと回して、ナオトが扉のなかへわたしを招き入れる。つん、といやな匂いがした。薄暗い部屋、注射器、紫色の煙、ゴミ袋から溢れて床に散らばる血のついたティッシュ、ガーゼ。たくさんのおとこと、おんな。ナオトは、しらない女の人とケタケタわらいながらセックスしていた。ちょっと、あいだあいだの記憶はなくて、わたしも、みたことのない男の人に、すこし変な風に犯されたり、ぶたれたりした。さいごまでじっとしていたとおもう。不思議に、涙は出なかった。硬いプラスチックのうえを、速い風はただ擦るようにとおりすぎていく。ずっと眼はあけたままだった。
深夜。涎をながして眠りこけていたナオトのポケットから車のキーを取り出
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