月のありかは/ねことら
 


ナオトはセックスのときだけやさしくて、電気でできた釘をしんぞうに打ちこまれたような幸福感でわたしはぼろぼろ泣いてしまう。きもちよくてきもちよくて泣いてしまう。それ以外のナオトは冷たくて、ときには暴力をふるうから、わたしはひどく怖れている。


車を買ったんだ、新車だぜ、と、ナオトは助手席にわたしを乗せてくれた。セックス以外でナオトにそんな風にやさしくされるのは初めてだったから、とてもうれしくて、お気に入りの白のニットセーター羽織ってひどくにこにこしていた。気持ちのいい春だった。ナオトはやけに陽気で、乱暴にハンドルを切りながら郊外のアパートにわたしを連れて行った。錆びたノブをがちゃりと
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