誰かの葬送/ホロウ・シカエルボク
知らなかった
友達の一人が
川底の石か何かで足の裏を深く切って
ひとりだけ救急車で先に帰った
あの日のことを思い出した
残ったぼくと女の子ふたり
夕暮れまで泳いで
帰り道が判らなくなって
そうだ
川の近くの商店のおばさんに道を聞いたら
軽トラックで街中まで乗せて行ってくれた
大きな川のそばでは
外灯の明かりなど大した意味は持たないのだと
あの時初めて知ったのだ
もう少し帰るのが遅れていたら
ぼくらもあの川に飲み込まれていたのかもしれない
あの日
まだ鬱蒼と木が繁っていた中央公園で
おなかをすかせたぼくたちはそばを買って
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