誰かの葬送/ホロウ・シカエルボク
 
って食べたのだ
もう二十二時を過ぎていたんだ
あの時隣にいたのが誰だったかもう思い出せない
どうしてその日ぼくらがそこに泳ぎに行ったのかも
ただ突然そんなことを思い出したのは
あの暗い暗い川沿いを歩きながら聞こえていた
静かな川の流れが
まるで
死んだ人を運ぶようだと
そう感じたせいかもしれない
ぼくは
コーヒーをブラックで飲んでいた
老人は
いつまでたっても茶を飲み終わることがなかった
きっと
茶を飲むことよりもほかに
彼にはしたいことがあったのだ
ぼくは彼に会釈をして
その席を離れた
付き合い程度の出席だったので
そのまま帰ることにした
中庭に面した光に濡れる窓に立って
高い高い空を見上げた
死者を送る煙を見ることは出来なかった
静かなピアノの曲が
寝物語みたいな音量でいつまでも流れていた



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