誰かの葬送/ホロウ・シカエルボク
 

同じ葬祭会館で行われることになっていた
会館の人間たちは
故人への尊厳をおもんじながらも
タイムスケジュールに追われて
頭蓋骨を静かに割る
「昔は一晩かけて骨にしたんだ」
やせた老人が
茶をすすりながら誰に聞かせるでもなく
呟いた晴れた午後のこと
ぼくは
なにか言わねばと思いながらも
本当の死を目の前にして
言葉など思いつけるはずもなく


数十年前のある日
自転車で半日かけてたどりついた川の
山肌の木々を飲み込んだ緑色を
穏やかな日差しの中で思い出した
ぼくは死などまだ見たこともなく
詩を書くことについてもよくは知ら
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