One and only life./瀬崎 虎彦
 
ムが搭載されている。スピーカは音を奏でるのではなしに、空気を震わせる楽器である。問題はどの空間の空気を震わせるkということ。広い部屋、狭い部屋。これだけで十分に条件は違うのだし、その点車の中はすでにデザインされた空間であって、僕のようにものを詰め込みすぎてスペースを埋めていくものはあっても、車そのものを拡張する人間はいない。とすれば、もともと奏でられる空間と空気のかたちは決まっているのであって、音の反響の経路も計算しやすくなる。すばらしい。人生はすべからくかくあるべきだと思う。
 市立図書館の前のケヤキの並木。卒業した大学に試料を納品して、その帰り道。僕は懐かしいかなと思ってすこし寄り道をする。
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