rain/ロリータ℃。
るこの廃屋には、錆びたやかんと、錆びた鍋がある。でもそれだけだった。それに埃くさい毛布。それだけで良かった。ナナがいれば。
柔らかい匂いのナナ。優しいナナ。凄く落ち着く。母がいたらこんな感じなのだろうか。かけがえのない、そういう存在なのだろうか。
失いたくない。ずっと僕を見ててほしい。
でもここには、食べ物がもうない。段々痩せていくナナ。細く綺麗だった黒髪がもつれて、起きてる時間が少しずつ短くなっていくナナ。
ナナには、帰る家がある。殴られたり蹴られたりしない、美味しい食べ物がたくさんある家がある。優しい母親がいる。けれど、嫌なことをする父親がいるという。
「
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