馬喰町のひと/恋月 ぴの
生足ってわけにはいかないし
衣替えになるまで制服の替えって支給されないのかな
あれは梅雨明けの暑い昼下がりだった
1週間程度の出張になるって話だったけどピアス忘れたからと立ち寄った彼の部屋
合鍵で開けた玄関に大きなリボンで飾られた黒いパンプス揃えて脱いであった
聞き覚えある女のひとの甘えた声に部屋の奥覗いてみれば
産まれたままの姿でもつれ合うふたりの姿
私に気付き母親に咎められた子供みたいに腰を引こうとする男の顔と
この期に及んでも奪った男を放すまいとして腰をうねらす女の上気した顔
何を話したのだろうか
萎えた股間を枕で隠しベッドの上で正座した男ひとり蚊帳の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)