馬喰町のひと/恋月 ぴの
夏の日差しと言うには頼りなさもあり
いまどきの紫外線は強いからと差した日傘も手持ち無沙汰で
ほつれかかったスカートの裾裏が気にかかる
彼女が和夫さんと離婚したこと
クラスメートのなかで知らなかったのは私だけだったようで
再就職できたことを自分のことのように喜んでくれた友人がうっかり口を滑らせた
溺愛していたお嬢さんの親権を和夫さん側に取られてしまったとか
今は実家のある洗足近くのマンションにひとりで住んでいて
勤め先のある馬喰町まで通いはじめたらしいとか
当然にして口を滑らせた友人に罪は無くて
問い詰めた私のしつこさに根負けしただけのこと
この歳になれば生足
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