青木龍一郎が動物園にやってきた/青木龍一郎
 
るほど、だからこんなに人と檻の距離が近くつくられているんですね」
「うむ。だからお客様はこんな感じにエサをやるのだよ」

そう言うと、園長は少し土のついたキャベツの切れ端を僕の方へ差し出した。
僕は檻の隙間から手を伸ばし、それを受け取えうとモグモグと食べてみせた。
「こうですか」
キャベツを口からはみ出しながら僕が笑顔で聞くと、園長は言った。

「何か違うな…」
「違う…ですか?」
「そうか、手と手でエサを渡すのでは人と人とのやりとりと変わらないから面白くない…。
 手で差し出されたものを龍一郎君が直接口で受け取ることで、お客様は動物と触れ合っている感覚を満喫できるのではない
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