JOY/ホロウ・シカエルボク
逃げ込み、女のような声で泣いているのだ、女のように―そんな歌がだいぶ前にあったような気がするな―俺はその声に耳を澄ます、それはますます俺の声であるような気がしてくる、俺はその声のことを可哀そうだと思う、それが俺の声であって欲しいと思っているのかどうかは、俺自身にはよく判らない…俺は煙草を消して音を立てないように頭を壁にもたせ、その声をよく聞こうとする、お前はまるで変わらない調子で煙草を吸い続けている…泣声を聞きながら天井を見つめていると、いま、この場所で、本当に存在してるのは誰なんだろうという気がしてくる、それについてはっきりと答えることが出来るやつが、この部屋か、もしくは隣室に、ひとりぐらいは居
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)