JOY/ホロウ・シカエルボク
 
けて…だけど俺にはそれをするだけの情熱がない…そんなものはもう、俺の中では一種のレトリックに過ぎない、そうだ、いつもそんな感じだった―思いはある、だが、手段がない―俺はいつもそんなシチュエーションの中で自分がどんな断層へ落ちていこうとしているのか、それを見極めようとし続けていたのだ
ベニヤ板みたいな壁の向こう側で誰かが泣いている…若い女のようだ、そいつの顔は見たことがない…俺が起きている時間には彼女は寝ているのだ―しかし今日は起きていて、さめざめと泣いている―俺はふと、彼女はもしかしたら俺の代わりに泣いているのだという考えに捕われる、本当はいま隣室には誰も居なくて、そこに行き場のない俺の魂が逃げ
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