結婚/千波 一也
受けとめきれない言葉が在るのは
なんら不思議ではなく
すべての言葉を
受けとめきれるつもりで
自らを削ぎ落としてしまう行為こそが
とても不思議で
ただ哀しい
それなのに
まったく等しい哀しみを
図らずわたしは
くり返す
(前述に隠れた虚偽を
(あなたはどこまで許せるだろうか
包丁という物を
ひとの柔肌に当てるとき
それはたいそう恐ろしく煌めくが
若菜をかるく刻むのも
背骨をやさしく除くのも
鋭利な刃物の所業であるから
時々おもう
鋭利な言葉もおそらくは
必要とされる光だ
と
(鋭利な刃を
(自分に向けたことがある
(誰かに向けたこと
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