明方、その暗がりに/ホロウ・シカエルボク
 
朝焼けで変色したカーテンを開くと
爪の先が少し火傷をする
鼓動の末端の痛み
鼓動の末端の痛みだ
そんなものに生命を学ぶほど愚かではないが
知るにこしたことはないという気がしたのは確かだ
オレは洗面台にいた
そこで血を流していた
頬についた傷はちょっと酷かった
濡れたタオルでキレイにしてから止血クリームを塗り
分厚いガーゼのついた絆創膏を貼った
巧く出来るときはこんなこと絶対に起こらないのに
昨日ここに居たオレと
今日ここに居たオレとじゃどれだけのことが違ったのだろう
飛びすぎた小蠅が窓ガラスで燃えた
オレは窓ガラスにバケツで水をかけた
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