十億円コミュニケイト/umineko
 

その社長のその声を
命だけはと懇願する
か細い社長のその声を
聞き出し
金庫を開けさせ
もらうべきものはもらい
もう
これではただの強盗で
社長には
死んでもらわなくてはならぬ
なぜなら
コミュニケイト
つまり社長と俺との間に
確かな会話が存在したのだ
命を賭けた真摯な会話だ
ポップな
コンクリートなアートなど
蹴散らせ
踏みにじれ
確かに
成立したのだ
社長の
上っ面した魂が
これほどまでにまっすぐに
届いたことがあっただろうか
俺は
わからぬままに
二、三度腹に突き立てて
電話線を叩き切って
ついでに腹を蹴り上げて
だんだん

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