十億円コミュニケイト/umineko
静かになったので
コミュニケイト
つまり
社長と
俺との間に
さっきまでそこにあったもの
俺はもうすっかり忘れてしまった
そんなものを
ポップな
コンクリートな札束を
お約束の黒いカバンに
アディダスの
ボストンバックに
修学旅行で使って以来の
そんなカバンに
札束はあふれゆく
だが
十億円には届かない
そしてその金を
返す気などもさらさらなくて
ただ
なるようにしかならないのだと
わかったような
わからぬような
逮捕されたその夜
オトコは
自宅でナイター観戦を
アディダスのカバンには
まだ
名札がついていたそうだ
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