壊れもの/千波 一也
 
にはならないけれど
ぼくはなぜだか忘れてしまえない

人はさ
壊れた後でしか
後悔できないように振る舞っているけれど
それは違う、と
最近気づいた

生まれたときから
命が終わりに向かうぼくらはね
壊れていくいっぽうなんだ
それも
とびっきり美しい完成形を経て
じわりじわりと
崩壊を味わうんだ
自分自身で
味わうんだ

たぶん
こんな恐ろしいことは
考えない方がいいに決まってる
だから男は突き進む
ためらいなど無さそうに
救いなど要らないように
生まれつきの呪縛を
生まれつきの聡明なガラスでもって
突き破る

男が
みずからの血に弱い理由
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