壊れもの/千波 一也
 
やつの入口なんだろうって
思うんだ

自分で言うのもなんだけど
けなげだよ、ぼくは


暑がりなぼくは
涼しいことが好きだし
水のなかに漂う自分を
想像するのも
実際に泳ぐのも好きだ
けど
ときどき深く
溺れてしまう

理由はよくわからない
よくわからないけど
きみの笑顔が
なにかしら関係しているような直感が
なんとなくぼくを
支配し続けている

夏ごとに
そう思う


そういえば
壊れたドライヤーを覚えているかい
壊れてしまった事実じゃなくて
あの働きものの
形や色や
風のここちのことを
覚えているかい
忘れたからって
罪には
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