壊れもの/千波 一也
 

男という生きものは
ことごとく非力なものだって
つねづね思う
ほんとに
思う
そりゃさ、女の子より腕っぷしはあるけどさ
それ以外じゃ役に立てない
でも
それを認めたらやるせなさ過ぎるから
男たちは
筋肉を頼る
力強そうな鎧にあこがれる


きみは
ぼくの匂いが好きだと言ったね
でもさ、
男の匂いはよくよく知ってる
タバコの匂いや
ビールの匂い
疲れた匂いや
満ち足りない
焦りの匂い
汗の匂い

ところでさ
におい、って漢字を
荷負いと書いたらどうだろう
きみはまた嗤うだろうけど
そんなことのために生きてるなんて思うのも
しあわせってやつ
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