無自覚/榊 慧
 
酢を飲みながらパソコンを打っていたけどはあ、と小さく息を吐いて立ち上がった。さとし、課題は終わったのかな。さとしの眠たそうな顔をチラッと見る。小さな鍋で牛乳をあたためているみたいだ。ぼくは自分のひざを見た。さとしのひざには怪我の痕がいくつか重なって残っていて、それに比べたら自分のひざは綺麗だなとぼんやり思う。

河合の目線は下げられつつも、俺を意識していることがありありと分かって俺は思わず笑ってしまう。は、いるよなあこういう奴。はは。あたためた牛乳を陶器のコップに入れ、机に置く。これを河合が手にとったら。手にとって飲んだら河合は「そういう奴」だと断定できそうな気がした。俺が飲むために自分であた
[次のページ]
戻る   Point(1)