無自覚/榊 慧
あたためただけであるということを判断の選択にすら入れてないということだろうか、と。黙っていようと思う。座ろうとしたとき、あ、
かたん。さとしがあたためたぼくの分の牛乳を机に置く。とりあえず目線は下げたまま、そのコップを手にとる。指がコップを熱いと判断、熱いよさとし、持てないよ。まだ目線は下げておこうか、もう上げてもいいかなと少し悩んでいると、さとしがまるで耐えきれなかったみたいに言った。「……それ俺の分だよ」さとしの表情の中で、初めて見る顔だった。
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