恋のうた(サチコに)/オイタル
かび臭い二月に始まる
情けない恋のうたをサチコに
ぼくはある日
茶色い少女に恋をする 髪も制服も靴下も
少女は教室で教科書をカバンに詰め
僕は黒板のようにそれを見ていた
せっかくの恋をしたのに
ぼくはそれをつまらない
小さな木箱に仕舞い込んでしまった
少女は木箱の陰に
ひっそりとミルクをこぼし
木箱の中でかすかにオルゴールが
鳴っていたが
耳鳴りだったかもしれない
とにかく
せっかくの恋をしたのに
それにぼくは重さのない
甘くて細い布を引いてしまった
それからも毎日忘れずに
置時計は十二時のお知らせを繰り返し
三月の窓の外に悪気のない
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