恋のうた(サチコに)/オイタル
ないクラクションが行き交い
ぼくの耳の奥ではいつも
オルゴールが鳴りやまない
その後ぼくは
二つの戦いに破れ 三つの戦いを勝ち抜き
カラスのうたと 白塗りのうたを歌い
うそつきの涙を流し
置時計とクラクションと木箱のオルゴールは
身勝手な繰り言をやめなかった
そして五月
いまだに少女のカバンは たわごとを飲み込んでいる
ぼくはスイッチに手を伸ばし
黒板には明るい照明が走り
教室はターンテーブルのように回り始めるのだが
せっかくの恋をしたのに
ぼくはそれを 饐えた天井の梁の陰に
気付かずに止まらせてしまった
情けない恋のその後は
情けないままの
お話である
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