樹を植えた男/新守山ダダマ
来の緑豊かな夢を見据えて
この土地を襲う強い風も どこ吹く風
第一次世界大戦が起きても どこ吹く風
どんな災難に襲われて 苗が全滅しても どこ吹く風!どこ吹く風!どこ吹く風!
男は何度も絶望の淵に立たされながら
それでも 木を植え続けた
第二次世界大戦のさなかでも 木を植え続けた
世界中で無数の命が失われていく中で
このフランスの山奥では
いつも干上がっていたはずの川はとうとうと流れる水をたたえ
小さな牧場や菜園や花畑が次々に生まれ
人々の生きる喜びがよみがえった
戦争で全てを破壊するのも人間なら、全てをよみがえらせるのも人間だ
この男の一心不乱のひたむきさが 色とり
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