旅記 '04 / ****'04/小野 一縷
 

傷口を潤ませた 腐った通草の甘味が舌に絡まる 
黒い悪寒が 濡れた刷毛で 身体中を 真黒に塗ってゆく 
黒い静穏の 冷え切った重さの美味よ


瞬きの間 濡れた瞳の水面に響いた 私の為の葬送曲
なんて奇怪な音楽だろう 全ての旋律が 
アルミニウムと血と硫黄と鉄とカルシウムとアルカロイドCと 
マグネシウムとTHCとの複雑な衝突音で 繰り返し重奏されている
臓物 筋肉 脊髄 脳幹 
それら 肉体の終末が 今 祝福され 昇華する


だが 
この精神は どうだ 医薬廃棄物として 
ガスマスクを被り 耐放射能のスーツを着た
潔癖症のシスター達の手で 鉄条網の茨の上に
[次のページ]
戻る   Point(4)