旅記 '04 / ****'04/小野 一縷
大地を 赤く焼き
海原を 黒く焦がし
街々を 灰で包む
仮初の冬に立ち並ぶ 木立の影が 次々と 無色に揮発する
無音で射してくる 純潔な放射能を 光の雨と浴びて
ああ
白樺の裏庭で ブランコが黒い焔に包まれて
白と黒の 交錯の中に現出する黄昏
遠くまで 甲高く 揺れる燃焼音
暗く燃えたまま 南風に背を押され
振り子のように いつまでも 振られていたい
黒い
黒い蝶が 真新しい紙幣のような その鋭い羽から
若罌粟の鱗粉を 火薬のように さらさらと零して
おお
黒く巨大な箒星が 斜めに落ちてくる
暗黒の放射帯を引き連れて その闇に浸れば
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