イリュージョン/済谷川蛍
に反響した。彼女は周りを見渡し、正面のドアに視線を止めると「ねぇ、ヒロくん。あの奥がどうなってるか確かめてみてよ」と言った。ヒロキはいつもの調子で「マジ勘弁!」と言いそうになったが、ぐっとこらえ、ここまで来たならとドアまで歩いていった。「すごーい」とヨシミとヨウスケは礼賛した。ヒロキは少しの勇気で扉を開けられると思っていた。が、そのドアは少し雰囲気が違った。何かわからないが、恐ろしげな何かが、向こうに立って待っているような、そんな不安を感じた。後ろを振り返り、「ねぇ、やっぱいっしょに開けよう」と言った。2人は近づいてきた。そして、ドアの前に立ったヨシミが言った。
「やだ、なんかここちょっと怖
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