イリュージョン/済谷川蛍
 
ヒロキにとっては自尊心を傷つけられる一言だったので、思わず「怖くねーよ!」と声を荒げてしまった。そして、中に入って少しだけドアを閉めるくらいなら、と初めて足を屋敷の中に踏み入れ、ヨシミとヨウスケのほうを余裕の表情で見つめ、ドアを閉めた。ガチャンとドアが閉まった瞬間、外の喧噪と完全に隔絶され、館の中が恐ろしいほどの静寂に包まれたので、ヒロキは瞬く間にドアを開けてしまった。ヨシミとヨウスケはぽかんとしていた。これじゃぁ一体何がしたいのかわからない、と焦ったヒロキは、今度はあまり余裕じゃない表情のまま、再びドアを閉めた。そして、まずはこの静寂に慣れようとした。少し慣れてきて、同時に勇気も湧いてきて、館の
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