イリュージョン/済谷川蛍
 
いタイルが、信じられないほど綺麗に床に並んでいた。何か、人が立っているような気配がして、あまり奥のほうを確認することが出来なかった。
 「ねぇ、何かあるー?」とヨシミが言った。
 「いや、何もなーい」とヒロキは大して中の様子を見ずに応えた。ヒロキ的には、もうドアを開いたというだけで、十分勇気を示したはずだった。しかしヨシミは言った。
 「ちょっと中に入ってみてよー」
 ヒロキは、そんな無茶な!!と思ったが、いかにも面倒くさいという声の調子に変え、「えー?」と声を伸ばした。言うに事欠いてヨウスケが「ヒロくん、怖いのー?」と言った。それはあくまで、勇敢な友を心配しての言葉だったが、ヒロ
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