イリュージョン/済谷川蛍
ますかー」とヒロキは叫んだ。ヨシミやヨウスケもそれに続いて何度か声を上げたが、館は沈黙している。窓は薄暗いカーテンで被われていた。ヒロキは石を拾って、その行為自体が勇気の証であるかのように、窓に向かって放り投げた。パリン!と音を立てて、石がカーテンの向こうに吸い込まれた。「あー、無茶する!」とヨウスケが嘆いた。ヨシミも心配そうな顔をしている。「大丈夫だって」とヒロキは余裕ぶったが、何か、館が怒っているように見え、内心深く後悔していた。
彼はしかたなく、一人で玄関の前に立ち、おそるおそるドアを開けた。鍵が閉まっていてくれ!と密かに願ったが、ドアはスッと開いた。一階の様子が見てとれた。四角いタ
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