イリュージョン/済谷川蛍
 
はレバーを握った。3人は心の準備をした。ヒロキは慎重に力を込め、レバーを下げた。滑らかな感触の後に、ガチンッと何かにはまるような衝撃が伝わった。突然乾燥機のような騒音が鳴り響き、きゃぁっとヨシミとヨウスケが叫ぶ。ヒロキは目を疑った。なんと、畳がめいめい沈み込んでいっている。ヒロキが立っている床の間だけが唯一の安全地帯で、ヨウスケが半泣きになりながら、間一髪そこへ飛び乗った。しかし畳の上に取り残されたヨシミは悲鳴を上げながら、どんどん底へ沈んでいった。ついに姿が見えなくなり、悲鳴も途絶えた。乾燥機のような音も止んだ。部屋にぽっかりと穴が開いた。床の間は狭く、ほとんど余裕が無い。少年たちは本気で怯えて
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