イリュージョン/済谷川蛍
ぇ……」と焦燥を漏らしながら、ついに中のものを全部畳の上に広げた。可愛いキャラクターの描かれたタオルや、まだ乾いていない水着などはあったが、携帯電話は無かった。
「充電してて家に忘れた……」とヨシミは言った。ヒロキも無駄なものは一切持ってきておらず、携帯はもとから持っていない。ヨウスケは、トレーディングカードや、ペンライトなどの無駄なものはあったが、携帯はやはり持っていなかった。にわかに燃え上がった希望の火は一瞬にして消え、3人は魂が抜けたようになった。
「やっぱり入らなきゃ良かった」とヨウスケが泣いた。
その言葉を恐れていたのはヒロキだ。彼は責任を感じていて、2人のどちらか
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