イリュージョン/済谷川蛍
った。両手で握り、「んん……」とありったけの力を込めるが、絶望的に固い。
「なに、どうしたの?」とヨシミがすぐに危機的状況を察知する。ヒロキは「開かない!」と応えた。ヨシミとヨウスケが悲鳴を上げる。「ヨウスケ手伝え!」ヒロキが大声を上げる。ヨウスケも一緒にドアノブを握るが、ビクともしない。ヒロキが「代わって」と言って一人で回し、そして今度はヨウスケが一人で回したが、無駄だった。扉は頑丈に壁にはまり、蹴る気も起こらない。3人は畳の上に座り、しばし呆然としていた。突然ヒロキは閃く。
「ヨシミ、携帯は!?」
「あっ」とヨシミは口を手で覆った。そして水泳袋の中をガサゴソと探り、「あれぇ…
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