イリュージョン/済谷川蛍
デがこの場を去ったら、もう2度と自分たちは、誰にも発見されないような、そんな気がしたのだ。だから魂の限り叫んだ。
「待って!ヒデが助けて!」
ヒデトは、尋常でない何かを感じた。そしてカバンからノートと筆記用具を取り出して、地面にしゃがみこんだ。「わかった。じゃぁ、式を教えて!」
「あのねぇ、よく記号の意味がわからないの」
「いいから。式の形をなるべくわかりやすく」
「うん、あのねぇ……まずは一番左の数字ね。上の数字が6でね、そして下の数字が9で、その真ん中に何か線が引いてあるの。その右にプラスがあってね……」
ヒデトはすぐに分数の問題だと悟った。普通であれば、彼
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