イリュージョン/済谷川蛍
 
た。そのたびにガクッと物体ごと沈んだ。それからやっと陸に上がった。ヒロキは思わず吐きそうになった。しかし、何も出なかった。「だいじょーぶ!?」ヨシミが泣きそうな声。ヒロキを助けてくれたのはヨウスケだった。ヨウスケも溺れかけて水を飲んだらしく、うええぇっとうめいていた。ヒロキは思わず「ヨウちゃん……」とヨウスケの身体を抱きしめた。それから「ヨウちゃんありがと……ヨウちゃんありがと」と繰り返した。ヨウスケは「うん。良かったね……」とただ一言だけいった。ヒロキはこの命の恩人に、ただ「ありがと、ありがと、ありがとう」と言う他無かった。そして、これから一生、ヨウちゃんに尽くしていこうと、そう心に誓った。闇の
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