イリュージョン/済谷川蛍
バシャとクロールで泳ぐ2人。ヒロキは孤独を感じた。そして、何か得たいの知れない恐怖を感じた。何か、自分だけ助からないんじゃないかという、不安。自分は絶対に死なないという真理が、崩れ落ちるような。途端にリズムを崩した。少し下半身が傾き、右足を下に伸ばしたが、まったく足が届かない。焦った。手と足を激しく動かすが身体が沈んでいく。「着いたよー!」とヨシミとヨウスケが叫んだ。ヒロキは思わず「助けて!」と叫ぼうとしたが、水を飲んで、まともな日本語を喋れずにもがいた。「どうしたの!?大丈夫!?」ヨシミの声。もうダメだと思ったとき、ガシッと誰かが腕を掴んだ。ヒロキは思わずその近くの物体を掴み、息を吸おうとした。
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