イリュージョン/済谷川蛍
のボコボコという音が、どうにも苦手だった。さらに言えば、息継ぎのとき、自分は世にも醜い顔を友人たちに晒しているんじゃないかという心配もあった。
ということでヒロキは泳げない。「どうするの?」とヨシミは聞いた。ヒロキは足が震えながらもそれを必死に隠し、「かえる泳ぎで泳ぐよ。顔をあげたまま泳げるし」と言った。そして、ついに泳ぐことになった。
「それじゃぁ、一、二、三」
ヨシミとヨウスケはクロールで泳いだ。ヒロキは、なるべく2人の飛沫を被らないように、少し間を置いた。そして、名残惜しそうにつま先でなるべく畳の上を歩いてから、ツンッと蹴り上げ、かえる泳ぎを始めた。前のほうをバシャバシ
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