イリュージョン/済谷川蛍
 
なくてもいいと言い、難なくタオルの上に着地した。それから3人はタオルを水泳袋に詰めて、肩に背負い、ヒロキはペンライトを持って、少し奥のほうへ進んでみた。
 「すごく広い」とヒロキは言った。実際、床の間側に壁は無く、空洞が続いているようだった。「どうする? 進む?」とヨシミが聞いた。「うん。一応、何があるか見てみよう」そして3人はペンライトの光を頼りに闇の奥へ進んでいった。
 「うわっ」と先頭を歩いていたヒロキが叫んだ。つられて後ろも叫ぶ。「水だ!」ヒロキは言った。畳の上に、水が浸水しているような感覚を感じた。「本当だー……」ヨシミの声が、まるで鍾乳洞のように響く。足元を照らすと、たしかに1
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